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津村記久子著『ポトスライムの舟』

初めての津村記久子。
『ポトスライムの舟』と『十二月の窓辺』の二編収録。

『ポトスライムの舟』
主人公は長瀬由紀子(ナガセ)、29才、工場勤務、年収163万円。 
の日常。

ものすっごいことが起きるわけではないが、その日常が妙にリアル。
誰かの日記といわれても納得しそう。
工場の同僚の岡田さんもホントにいそうだし、大学時代の友だちのヨシカもりつ子も現実にいそう。
そよ乃みたいな人もいるよな~と、ちょっと意地悪な気持ちで思う。w
ものすごいことが起きるわけではないと書いてはみたものの、
あらてめて考えてみると、友人の家出とかそれなりのことは起こっているわけで・・・
それを(友人の家出)大した出来事ではないと感じるのは、わたしも人生重ねたってことか?笑

ポトスライム

 たぶん自分は先週、こみ上げるように働きたくなくなったのだろうと他人事のように思う。
工場の給料日があった。
弁当を食べながら、いつも通りの薄給の明細を見て、おかしくなってしまったようだ。
『時間を金で売っているような気がする』というフレーズを思いついたが最後、体が動かなくなった。
働く自分自身にではなく、自分を契約社員として雇っている会社にでもなく、生きていること自体に吐き気がしてくる。
時間を売って得た金で、食べ物や電気やガスなどのエネルギーを細々と買い、なんとか生き長らえているという自分の生の頼りなさに。
それを続けなければいけないということに。
  ~津村記久子著『ポストスライムの舟』より~




突飛なところのない、極めて常識的な(と私は感じる)ナガセだが、ときにはこんなことを思うのもリアル。
「吐き気」という表現はともかく、生きていることに否定的な気持ちが浮かんできたことは、自分の頭でものを考えたことのある人間ならば一度や二度はあるのでは。
生まれてこのかた、一度も、生きていることに疑問を感じたことのない人とは親友にはなれないかな。笑


引用続き。

 それを紛らわすための最高の特効薬が『今がいちばんの働き盛り』という考え方だった。
三時の休憩の時に、トイレでその言葉を手帳に書くと、胃の中のむかつきがすっとひいていった。
この劇薬のような言葉を、是非自分に刻み込みたい思ったのだ。
そうすれば、ルーニーばりにとはいかないだろうが自分はもっと働くことができる。
また息をしていることがいやになったら、それを見ればいい。
メモなどではなく体に書いてあったら、ますます自分のこととして実感しやすくなるだろう。
  ~津村記久子著『ポストスライムの舟』より~



幸い
>生きていること自体に吐き気がしてくる。
という現状ではないけれど、わたしも、そのときどきで〈自分の生きるよすがになる言葉だったり、希望が湧いてくる言葉だったり、イメージを喚起する言葉を持っていると生きやすい〉という性質なので、ナガセに親近感。

ドラマチックな出来事だったり、人の闇を描くものだったりが心に残りやすいのは想像に難くないけれど、
この『ポトスライムの舟』は、そのようなものがないのだけれど、なんだか心にふんわりと残る本でした。







★他の本の紹介はこちらより
 http://kakurega13.blog.fc2.com/blog-category-7.html





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1968年生まれ、大阪在住akemiが
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